子宮頚がん

子宮頸がんとは?
子宮がんは、子宮体部にできる「子宮体がん」と、子宮頸部にできる「子宮頸がん」に分類されます。
子宮頸がんは、子宮の入り口の子宮頸部と呼ばれる部分から発生します。子宮の入り口付近に発生することが多いので、婦人科の診察で観察や検査がしやすく、発見されやすいがんです。また、早期に発見すれば比較的治療しやすく予後のよいがんですが、進行すると治療が難しいことから、早期発見が極めて重要です。
子宮頸がんは、進行すると骨盤の中のリンパ節に転移したり、子宮を支えている靱帯を伝って広がったり、また血管やリンパ管を通って子宮から遠い臓器(肺など)に転移したりすることがあります。
子宮の構造と機能
子宮は女性の骨盤内にある臓器で、大きさは成人女性で鶏の卵程度です。子宮は、下部の筒状の「子宮頸部」と、上部の袋状の「子宮体部」に分けられます。子宮頸部の下は腟につながり、子宮体部の左右からは卵管が出ています。また、子宮の左右には卵巣があります。基靱帯は、子宮頸部の周囲にある組織(子宮傍組織)の1つで、子宮を支えています。
子宮は妊娠したときに胎児を育てる器官です。筋肉でできており、内側は子宮内膜と呼ばれる粘膜でおおわれています。子宮内膜は、卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)というホルモンの作用を受けると、受精卵の着床に備えて増殖して厚くなり、妊娠しなければはがれおちます。これを月経といい、この周期は閉経するまで通常4週間隔で繰り返されます。
子宮頸がんの症状について教えて下さい
子宮頸がんは、正常な状態からすぐがんになるのではなく、異形成といわれる、がんになる前の状態を何年か経てからがんになります。異形成の時期では症状がなく、おりものや出血、痛みもありません。
子宮頸がんが進行すると、月経中でないときや性交時に出血したり、濃い茶色や膿のようなおりものが増えたり、水っぽいおりものや粘液が多く出てきたりすることがあります。さらに進むと下腹部や腰が痛んだり、尿や便に血が混じったりすることもあります。少しでも気になる症状があるときは、ためらわずに早めに婦人科で相談しましょう。
子宮頸がんの組織型分類(がんの組織の状態による分類)
子宮頸がんの組織型は、扁平上皮がんと腺がんに大きく分けられます。扁平上皮がんが全体の7割程度、腺がんが2割程度を占めます。扁平上皮がんも腺がんも、がんになる前の状態が存在し、その中でも前がん病変と呼ばれる高度異形成や上皮内がんでは治療が必要になります。
子宮頸がんの検査
子宮頸がんの検査では、通常まず細胞診を行います。その結果によっては、子宮頸がんの発生する危険性が高い種類のHPVの感染を検査する、ハイリスクHPV検査を行うこともあります。精密検査として、コルポスコープ(腟拡大鏡)下の組織診、さらに円錐切除術による組織診を行います。がんの広がりをみる検査には内診・直腸診、超音波検査、CT検査、MRI検査、PET検査があります。また膀胱や直腸を内視鏡で観察し、浸潤の有無を確認することもあります。その他、診断の補助、治療効果判定、再発の早期発見のために、腫瘍マーカーの検査を行うこともあります。
■ 細胞診
ブラシなどで子宮頸部を擦って、採取した細胞をガラス板に固定し、それを色素で染めて顕微鏡で見る検査です。異常な細胞が見つかると精密検査を行いますが、がんと診断されるものは一部で、多くは異形成と呼ばれるがんの一歩手前の段階のものです。細胞診で異常が見つかっても、がんと決まったわけではありません。
■ コルポスコープ診・組織診
細胞診で異常があった場合には、コルポスコープと呼ばれる拡大鏡を使ったコルポスコープ診を行います。子宮頸部を拡大して観察し、正常、異常、浸潤がん、評価不能などに分類します。そして疑わしい部分の組織を採取し(生検)、作成した病理組織標本を顕微鏡で観察して子宮頸がんや異形成などの確定診断を行います。さらに必要があれば、子宮頸部を円錐状に切除して組織診断を行います(円錐切除術)。
■ 内診・直腸診
内診では、腟に指を入れ、もう片方の手は下腹部にあて、両方の手で挟みながら子宮の位置や形、かたさなどを調べます。直腸診をすることもあり、子宮傍組織(基靭帯)への浸潤の程度、直腸やその周囲に異常がないかを、肛門から指をさし入れて調べます。
■ 超音波検査
体の表面にあてた器具から超音波を出し、臓器で反射した超音波の様子を画像にして観察する検査です。腟の中から超音波をあてて子宮や卵巣の状態を観察したり、おなかの上から超音波をあてて、別の臓器やリンパ節への転移がないかなどを調べたりすることができます。
■ CT検査・MRI検査
CTはX線、MRIは強い磁場を使い、体の断面の様子を画像にして調べる検査です。いずれも造影剤を使うことで、診断の能力が上がります。治療前の子宮頸がんの広がりや、リンパ節や離れた臓器への転移などの診断に使います。
■ PET検査
放射性フッ素を付加したブドウ糖液を注射し、がん細胞に取り込まれるブドウ糖の分布を撮影することで、がんの広がりを調べる検査です。リンパ節や他の臓器への転移の有無、がんの再発の有無、治療の効果を調べるために使われることがあります。
■ 内視鏡検査
内視鏡検査には、膀胱鏡検査と直腸鏡検査があります。膀胱鏡検査では、尿道から膀胱へ内視鏡を挿入して、膀胱の中にがんが広がっていないか調べます。また、直腸鏡検査では、肛門から内視鏡を挿入して、直腸の中にがんが広がっていないかを調べます。
■ 腫瘍マーカー検査
腫瘍マーカーとは、がんの種類により特徴的に産生される物質で、血液検査などにより測定します。この検査だけでがんの有無を確定できるものではなく、がんがあっても腫瘍マーカーの値が上昇を示さないこともありますし、逆にがんがなくても上昇を示すこともあります。
子宮頸がんでは腫瘍マーカーとしてSCC、CA125、CEAなどが使われます。診断の補助、治療効果判定、再発の早期発見などに用います。しかし、早期がんでは上昇しなかったり、他の良性疾患でも上昇したりすることがあり注意が必要です。
子宮頸がんの画像例
*本投稿は、国立研究開発法人国立がん研究センターの「がん情報情報サービス」などから抜粋し、加筆・記載したものです。
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